妄想彼女偏屈列伝「かくれんぼ」
「あれは自分が10歳のときです。
主な遊び相手が同学年の有希子ちゃんでした。島で唯一の同級生です。
放課後はいつも遊んでいて、あの日はかくれんぼをすることになったんです。
じゃんけんで負けた自分が鬼でした。
隠れる場所は島全体でした。
もういいかいの声が島全体に聞こえるようにと鬼の自分は島の頂上にある神社に行きました。
当時、あの神社は今ほど商売繁盛の社として有名ではなかったので島外からの人もいませんでした。自分も「オトクイサマ」を祀っているなんてしりませんでした。
自分がもういいかいと言うと最初の数回は「まだだよ」の声が聞こえました。でも途中から返事が無くなりました。
もういいよが聞こえないんじゃしょうがないと思い返事がなくなって数回声をかけてから自分は探しはじめました。そのときは遠くに逃げたんだろうなと思って、急いで石段を下りました。街中を探しました。
だけど有希子ちゃんは見つかりませんでした。自分は日が暮れたので家に帰りました。
しばらくしてから有希子ちゃんのお母さんが家に来ました。有希子ちゃんがまだ帰ってないからうちで遊んでいると思って迎えに来たそうです。
そこで自分がかくれんぼの途中で帰ってきたことを伝えました。母親にぶたれました。ええ、今の自分もきっとぶつでしょう。
有希子ちゃんが帰ってないことが島中に広がってみんなで探しました。
でも有希子ちゃんは見つかりませんでした。
それから自分はずっと有希子ちゃんを探していました。
神隠しを研究しだしたのもこのことがあったからです。
―山の神社―
???「あのーすいません」
???「はい?あれもしかして治くん?」
治「あ、神主さん覚えてるんですね」
神主「そりゃ覚えてるよ。うちに来たってことは、まさか起業とかしちゃうかんじ?」
治「いや、自分は大学院に行くんですよ」
神主「あ~そうなの」
治「神主さんが神隠しだって言ったから自分は神隠しの研究をしたんですよ。ねえ神主さん、ここの神様の名前ってなんでしたっけ?」
神主「ああ、彼女のことは残念だったね。で商売繁盛のお得意様だけどそれがどうしたのよ」
治「隠さないでくださいよ」
神主「なにを?」
治「ここの神様は商売繁盛の神様なんかじゃない。音を喰う神様で音喰様だ」
神主「聞こえないな」
治「ふざけるな」
神主「おいおい近寄るなよ。鬼の分際で社殿にあがろうとするとはいい度胸だな」
それでやっと見つけたんです。
あんな犯罪者が平和な島にいるとは思いませんでした。
不思議な話かもしれませんがこれが全てです。
余罪もたくさんあると思うのでそこは警察さんにお任せします」