零れた話「古いカードを持って俺は旅に出た」

縁もゆかりもない土地に来て何年が経っただろう。木々が鬱蒼と茂っているなか、なんにも喋ってくれない機械と数日間を共に過ごした。こいつとも今日でお別れである。ついさっきタイムリープが可能になった印のランプが点灯した。長かった。あまりにも長かった。俺は人類代表者として400年前の日本に行き今と過去をつなぐための設計図をあるエンジニアに渡す。そのエンジニアってのはこのタイムマシーンの試作1号機を作った人だ。んでその人は日本人で東京住み。歴史学者と考古学者の人が血眼になって探しだしたからわかったことさ。その時代ってのは個人にまつわる紙史料が少なくて探すのが大変らしい。まあその人が今と過去の双方向移動装置を開発できた場合、今の世界の現状は変わるってわけだ。そう俺が過去に行ったことも消えた事実になるかもしれない。こればかりは学者さんにもどうなるかわからないらしい。まあそんなことに世界の命運をかけるくらい俺たち人類は追い込まれてるってわけよ。そして俺がこんな説明口調の台詞を吐き続けるのはタイムマシーンに搭載された遺映機能に遺映を残してるからだ。この映像もなかったことになっちゃうかもしれないのにな。笑うだろ。まあ、この映像が残っていたとしたら俺の任務が失敗したということだからそのときも笑ってくれ。おっともう録画容量が限界のようだ。最後に何を言おうかな。そうだ、俺の日本語上手いだろ?

 

ふう、これでいいか。撮り直ししたいがそれも出来ないんだろ相棒。はは、独り言が多くなるからいけねえな。一人ってのは。じゃあそろそろ行くか。

 

 

よし!ちゃんと森の中だ!!過去に戻った矢先に事故に合うそんなしょうもない失敗を防ぐため先生方が選定してくれた場所。大当たりだ。そして発掘された400年前の電波式の時計によるとここは2010年!相棒よくやったじゃねえか!誤差が30年あると聞いてビビったが大丈夫だ!あとは電車とやらに乗るための駅を探してこのカードを使えば東京に行けるんだな!って独り言を聞いてくれる相棒すらもいなくなっちまったんだな。はあ。

 

 

数時間過ごしてわかったが、ここに生きる人達と俺が学んだ日本語に違いはないし話していることも理解できる。問題なしだ。老人に聞くにはあと1時間後に電車とやらがくるらしい。そして今、俺は駅の前にいる。よし行こう!!

 

 

 

 

「先生がちゃんと磁気は残ってるって言ってましたよ!!!」

「いやだからね、磁気がどうこうじゃなくてうちじゃsuicaは使えないの。それが使えるのはJR東日本さん。もう何回説明したら分かるの?これ以上騒いだら警察呼ぶよ?」

 

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